会議の心理学
ほとんどの会社や集団では会議を行います。定例会議や会社の今後の方針を決めるといった会議、多いところでは毎日のように会議が行われます。そんなみんなの意見を集約し、もっともよい結論を導くはずの会議。実は大きな落とし穴があるのです。
昔、ワラック、コーガンらが面白い心理実験を行いました。見ず知らずの6人を集め、12の質問文(架空の設定条件の中、そこに登場する人物は、どうしたらいいのか)に回答させました。最初に個別に回答させ、その後、6人で話し合ってもらって全員一致の結論を考えてもらいました。質問の例としては「ある電気技師は、困らない給料を得ている現在の職種にとどますべきか、不安定だが、かなり給料の高い別の会社に勤めるかで悩んでいる」などです。
この話し合いの結果、どんな結論になったかというと、個別にもらった回答よりも危険度の高い方向に結論が向かいました。つまり極端にリスクの高い結論に至る事が多いのです。別の質問では、逆に極端に保守的な意見が出されたそうです。これは自分の意見と他人の意見が触れる事によって起こる「集団の効果」です。例えば、自分と似た意見に触れれば(自分は正しい)という確信が強まり、ますますその考えを押し通そうとします。また自分よりも凄いと思う意見に触れれば(私も目立たなきゃ)という気持ちになり、もっと意見を極端にする事により正当性を主張してしまうのです。
このように、より良い意見を見つけるはずの会議が全く逆の集団のリスクを高めたり、何も決まらないといった愚かな決定をしてしまう時があります。これを「集団的浅慮」と言います。他人との「和」を大切にする日本人は集団内の意見を一致させる事に重点を置いてしまい、参加メンバーが個人的に思う疑問が言えなかったり、反対意見をきちんと議論できなかったり、慎重な検討を行う事が出来なかったりする場合があります。そのせいで取り返しのつかない失敗をしてしまう場合が多々あります。
このような状態に陥りやすい集団は、専制的なリーダーがいる集団、他の自分達より強いライバルがいる集団などがあげられます。
会議は基本的には「極端にリスクの高い意見」に向かうか「極端に保守的な意見」に向かいやすいという事をぜひ、肝に銘じて下さい。そして、「集団的浅慮」に向かわないためには、あなたが思っている疑問や考えを反対意見だとしても、しっかり提示する事です。そして皆でしっかり検討する事です。あなたの一言が、あなたの組織を守る事になるかもしれませんから。